保育園の運営費と人件費を詳しく検討する①

大阪市内のA保育園さんから協力を頂き、1ヶ月の運営費に占める人件費の割合を検討しました。

〇園児定員と在籍数
定員 本園90名 +分園30名 計120名 
2016年7月の園児在籍数
0歳:13人 1歳:35人 2歳:35人 3歳:22人 4歳:21人 5歳:19人 計122人

〇職員状況 
正規職員:24人  保育士18人 +栄養士調理師3人 +園長・理事長・事務
パート職員:11人  
全職員数:35人

〇運営費の申請と交付の流れ

運営費は毎月大阪市から支弁される費用と、年間一回交付申請によって支給される費用に分けられる。

毎月の費用は大阪市が各園の運営費を計算し、「精算書」に記されて園に届く。
各園は計算内容を確認し、大阪市に運営費を請求。
市は請求を受けて、園に運営費を支給する。

交付申請により支給されるのは、嘱託医や看護師の人件費、アレルギー児対応の栄養士加算、障害児保育料、延長保育料などがある。
【ほとんど実際に使われた金額が補助金として補てんされるだけである(根拠書類必要)。】

A保育園(平成27年度)の場合、年間531.8万円ほど。

つまり「精算書」の金額×12 + 交付申請による支給額がほぼ年間予算であるとみてよい。

では具体的に、2016(平成28)年7月分「精算書」をもとに1ヶ月の運営費をみて、前年度の「決算書」と見比べて精査してみる。

〇A保育園の7月分運営費 大阪市「精算書」より


人件費

管理費

一般生活費

利用人数

乳児

1,765,696

132,184

98,040

1,995,920

10

12歳児

5,202,270

389,994

474,156

6,066,420

50

3歳児

829,032

65,516

142,392

1,036,940

22

4歳以上児

1,213,808

97,414

261,858

1,573,080

40




  ⇒小計

10,672,360




所長加算




986,020

122

3歳児加算




176,660

22

分園減額




397,060

23

主任加算




276,940

122

事務員加算




50,020

122

冷暖房加算  




13,420

122

9,010,806

685,108

976,446

1,1778,360



(※ 表が2つに分割表示されていますが、実際には1つに繋がっています。また6列目の「小計」は原本にはありません。 大川)


〇「精算書」の見方

表のいちばん上の行に「人件費」、「管理費」、「一般生活費」という記載がある。


「人件費」は保育園の職員全員の人件費(保育士以外も含む)を指す。


「管理費」は保育園の運営において必要な費用のうち、園児の処遇に関わらないものをさす。

大まかには園の維持や職員の勤務に必要なもの(業務委託費、福利厚生費、研修費、印刷製本費など)。

「事務費」とも呼ばれる。


「一般生活費」は園児の処遇に関わる費用全体をさす(保育材料費や給食費など。

園児分の水道光熱費も全体から案分して含む)。「事業費」とも呼ばれる。


この「管理費」=「事務費」、「一般生活費」=「事業費」を覚えていただきたい。



「管理費」と「一般生活費」の算定には国が示す根拠がある。

内閣府(2016.9.3通知)「子ども・子育て支援法附則第6条の規定による私立保育所に対する委託費の経理等について」と「参考資料」

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/h270903/siritu_hoikuen_hiyou.pdf

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/law/kodomo3houan/pdf/h270903/siritu_hoikuen_hiyou-2.pdf



〇一般生活費

・3歳未満児 児童1人月額 9,804 円    ・3歳以上児 6,637


【「一般生活費」の低さに驚かれる人も多いのではないだろうか?】


〇管理費 (上記サイトhiyou-2.pdf「参考資料」に一覧表がある)

90人定員保育標準時間 

 乳児 12,303円 1,2歳児 6,999

 3歳児 3,287円 4歳以上児 2,757


90人定員短時間    

 乳児 11,949円 1,2歳児 6,645

 3歳児 2,933円 4歳以上児 2,403


【「管理費」もずいぶん低い】



〇「人件費」の根拠

園児一人ずつの費用明細(個人別明細)が「精算書」に添付して各園に配布される。

それをもとに、各年齢区分ごとの「年齢別額」の合計(表の「計」の部分)を算定し、そこから「管理費」、「一般生活費」を引いたものが「人件費」となると大阪市の担当者は説明する。



【大阪市の説明は、「自分たちが保育士の人件費を決めている」と言わなくてすむ説明の仕方である。】



ちなみに、A保育園の年齢別運営費(「年齢別額」×人数 表の上5行分)は以下の通り。


0歳:187,760円×7+227,200円×3人 =1,995,920

12歳:107,230円×28+146,670円×16+128,430円×4+101,770円×2人 =6,066,420

3歳:47,630円×20+42,170円×2人 =1,036,940

45歳:39,600円×38+34,140円×2人 =1,573,080円  


02歳の4万円の差は本園・分園の違いによる。

35歳の5万円の差は標準時間・短時間の違いによる。


※なお、個人別明細の「年齢別額」は大阪市の場合、国の「公定価格単価表」のままである。

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_22/pdf/s1-2.pdf


地域区分:16/100、定員:90人の「保育必要区分」+「処遇改善等加算」+「所長設置加算」…により、

園児個人の「年齢別額」が算定される。それを人数分足していくことで「精算書」の上から5行分が決まる。



(長いのでひとまずここまで。これだけでも経営や会計の知識のある人には突っ込みどころが多いのではないだろうか?)

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